この話は私が試験を受けていた時に始まりました。
その試験は マナーモードにすれば、携帯持ち込み可であったのですが、私の携帯はマナーモードにはなるけれど、バイブが消せなかったので、メールが来ないように祈っていました。
講師の話が始まったその時でした。
「ブルブル!ブルブルー!ブブブブブブブッ!」
会場に響き渡ったので、その音を消すため、とっさに携帯を開いてしまったのです。
それは、英語塾をやっている弟(テンパー)からでした。
弟「おねー、助けてやってくれ~!」
「助けてやってくれ~!」
と言われればじっとしてられない私は、試験中だということを忘れて返信してしまったのです。
私「誰を助けるんや?」
私「(あっ、いけねー!疑問文で聞いてまったー!返すやろな?ヤバい!)」
案の定すぐに、
「ブルブル!ブルブルー!ブブブブブブブッ!」
またも、会場に響き渡りました。
弟「浪人生たちがセンターを前にビビっとる。
去年センターで失敗した子は特にや。」
私「テンパー、悪いけど今試験中、バイブ音が会場中に響き渡るで、試験終わったらメールするから待っとってー」
とメールしました。
「ブルブル!ブルブルー!ブブブブブブブッ!」
またもや、会場に響き渡りました。
私「(今度は誰やー?何で試験中に限って、こんなメールくるんや!)」
また、弟でした。
弟「一生懸命言葉掛けしとるけど、ビビりが収まらん。おねー、なんかいい言葉教えて。」
私「わかったで、頼む今試験中やで、終わったらすぐメールするで、待っとって」
「ブルブル!ブルブルー!ブブブブブブブッ!」
またもや、会場に響き渡りました。
私「(今度は誰や?何で試験中に限ってこんなメールくるんや!)」
また弟でした。
私「(なんなのあの子、あほちゃうか~!)」
弟「ありがと、じゃあ待っとるで、俺もメールするで、待っとって」
私「(だから、メールするなって言っとるやろ!)」
私「今はメールするな。ほかの人にも迷惑やで。絶対するな!」
「ブルブル!ブルブルー!ブブブブブブブッ!」
またもや、会場に響き渡りました。
私「(テンパーやめさせたし、今度は誰じゃあ!)」
開けてみたら弟でした。
弟「ごめんね」
私(これがメールやないか!!)
そして、私は叫んでしまったのです。
私「この、
バカたれがー!!!!」
会場にいる人たちが、もちろん講師もビクッとして一斉に私を見ました。
「ヤバい!」と思ったので机に顔をつけ静かにしていました。
そして、気づいたのです。講師の話が終わっていることを。
私は試験なんか適当にすませ、その子たちを助けるための言葉を考えておりました。
その子たちを早く助けたかったので、会場を出て急いで弟にメールしました。
「ブルブル!ブルブルー!」
弟「さすがおねーや。これやったらあの子たち助けれると思うわ。ありがとう。」
私「そう?役に立ったらいいなあ」
弟「こんな言葉、俺には書けん。おねー、これホントに自分で書いたの?」
ここまで持ち上げられたので、私はできあがってしまったのでした。
私「浪人生だけやなくて他の生徒もビビっとる子おるんやない?
送った言葉を文章化して、ワードで打ち込んで送ったろか?
それ受験生全員に配れば?」
弟「それはいいアイデアや。ありがとう。ありがとう。
おねーという強い味方がおって、ありがてえわ。」
ますます気分をよくした私は、
私「じゃあ、明日送るで、送ったらテンパー添削して送り返してね。」
弟「わかった!ありがとう。」
私は病気を抱えていて、ドクターストップ中だったのですが、ついのってしまったのです。
試験だけでもギリギリだというのに。
それが、最高の「幸せ」を実感できることにつながっているとは、この時は知りませんでした。
そして、翌日そのプリントを送りました。
弟のメールを待っていると、
「ブルブルー、ブルブルー!」
弟「今メールした、
よろしくお願い。」
というメールが来ました。
私「(これのどこが添削なんだ?何を伝えたいんや?
あの~!これがメールなんですけど?)」
いろいろ頭をよぎって、こんがらがって疲れはてて、ついに寝込んでしまいました。
しばらくして起きた時にひらめいたので、弟にメールしました。
私「メールじゃなくてファックス送ったんじゃないの?
もしそうだったら返信するなよ!
テンパーのメール、めっちゃ疲れるで、
まじメールせんといて!!」
「ブルブルー、ブルブルー」
弟「そう。
ファックス送った。」
私「(だから、これがメールやて!
げーっ、めっちゃ疲れる!
もう、頭おかしなりそうや!)」
添削もユニークだった。
弟「この漢字なんか読めん。何て読むの?」
私「『こっくべんれい』や。
普通高校生やったら読めそうなもんやけどな、
ひらがなにかえとくわ。」
弟「変えんでもいい。
俺は読めんけど、
俺の生徒はみんな賢い。
そのくらい読める!」
そのプリントを生徒たちに配った後に、
弟「おねーありがとう。
あのプリント読んで泣いとるやつおったし、額に入れて飾ってくれた子おった。
それに浪人生達が堂々として、すごいパワフルになった。
ありがとう、ありがとう。救ってくれてありがとう。」
私「(よかった。これでひと安心。寝よう。)」
そのプリントを紹介します。
【受験生へ 勝つぞ!】
受験を控え緊張しているかもしれません。
今が正念場です。
落ちたらどうしよう、とか受かるかな?受からないかな?と不安になることもあるでしょう。
マイナスを考えすぎて、心が負けてしまったら実際も負けやすいですよ。
そんな時は、受かってみせると思いましょう。
前を見て努力する事です。
最悪の状態を考えて対策を打つことも大切ですが、そればかりでは暗くなりやすいですよ。
受験対策をしっかりして絶対に心は負けないことです。
決して恐れてはいけません。
対策を練って心を正して、努力していきましょう。
苦難や困難があっても情熱があれば必ず道は拓けます。
その強さを持ちましょう。
言い訳はやめましょう。
未来を暗く思う心も捨てましょう。
刻苦勉励しなさい。
最高の自分を出し尽くすのです。
自分だけが大変なわけではないのです。
あなたを支えている家族も大変なはず。
受験勉強は辛いかも知れないけれど、それを許される環境が与えられ、
努力することも許されているということは、
本当は恵まれている事なのです。
努力は実はさせて頂いているということです。
また、それを通ることで、自分が向上する、ということも言えるでしょうし、強くなれる、ということも言えるでしょう。
成績が伸びないときは是非立ち止まって、いかに多くを与えて頂いているかを考え、感謝してほしいです。
心が温かくなり、また前進するパワーとなるはず。
信じる心も強くしましょう。
信念が現実を引き寄せる ということはよくあることです。
否定から肯定は生まれにくいのです。
だから、合格した場面を想像して、明るい未来を想像して、精一杯の努力をしていきましょう。
胸をなでおろせるほど甘くありませんでした。
ここは終わりではなく、始まりだったのです。
【受験生へ 愛をこめて】 ②へつづく