娘と実家にいたときの事です。
台所から
「ピーピーピーピーピーピーピーピー」と音が鳴り響て止みませんでした。
見ると、母が冷蔵庫を一生懸命直していました。
父に知られると、しゃべるだけしゃべって何の役に立にもたたないので、来ない方がいい、と思っていたのですが、来てしまいました。
私と娘は絶対おかしなことが起こるはず!と期待して隣の部屋で隠れていました。
父「冷蔵庫か!うるせーの。なんや、どないしたんや?なんかさっきから『ピーピーピーピー』 、言っとるけど、どうにかなってまったんか?お前なにやったんや。壊してまったんか?」
母「冷蔵庫のドア開けると鳴るし、閉めると製氷室のところが鳴ってまうんやわ。それに氷作れえへんの。」
父「どうしてこうなったの?めちゃくちゃな扱いしたんやねーか?普段からおばあちゃん(母)雑やでな、それが故障の原因やで。
感謝や、か~ん~しゃ!徳積まなあかん、徳積まな。そうしたら冷蔵庫もようなるわ。
そういうこと、そういうこと!
っね!」
母「そうかもしれんね。ほんなら、優しくやってみるわ。
冷蔵庫さん、冷蔵庫さんのおかげで冷えます。ありがとう。」
感謝しながら優しく開けたのに鳴ってしまいました。
父「あかんあかんあかんあかん!なにやっとんじゃおまえ!両手で開けなあかんやろ。
なんで右手だけで開けようと思ったの?
右手が上で左手をその下に添えるようにするんや。
そーっそーっとやるんやぞ。それ冷蔵庫に対する礼儀やぞ。何年冷蔵庫とつきあっとるんじゃ。
何でそんな当たり前の事わからんのや。おばあちゃん、おまえ頭おかしいぞ!ほんとにたわけ(あほ)やな。
感謝や、か~ん~しゃ!徳積まなあかん、徳積まな直らんの。そういうこと、そういうこと!
っね!」
娘「冷蔵庫って片手で開けるようにできてるよね?」
冷蔵庫の中を見て、父が言いました。
父「おい、何でこんなぎょうさん詰め込んどるんや。詰め込みすぎやで、鳴っとるんじゃわ。いっぺん全部出した方がええわ。出そ、出そ!
俺やり手やで、冴えとるわ!そういうこと、そういうこと。
っね!」
父「何でこんな奥の方に俺用のたくわんあるの?夕べ食べようと思ったに、探しきれんで食べれんかったんや。
誰や隠したの。夕べ食べれんかったでちょっと食べよ。」
つまんだ後
父「うめえなあ、やっぱたくあんはこんだけ薄い方がええ。厚いと俺の歯では噛み切れんしな。
そういうこと、そういうこと。
っね!」
また奥の方をゴソゴソやって、
父「何やー、こんなとこに俺が195円で買ってきた明太子あるやねーか。これふつうは198円なんやぞ!
3円も得になっとったで買ってきたやつや。これ、大丈夫か?賞味期限。」
賞味期限を見て、
父「あかん、あかん、あかん、あかん!はよ食べなあかん!今日が賞味期限になっとるで、今食べよ。」
食べ始め完食しました。
父「あかん、あかん、あかん、あかん!明太子食べたら喉乾いてまったやないか!こういう時は水がいい、水が。お湯は熱いであかん。お湯は熱いでやっぱあかん。
そういうこと、そういうこと。
た~のし~いな~!」
私「ねえ、ナナ(娘)おじいちゃん、冷蔵庫直すの忘れとらへん?」
また、奥の方から好物のしめさばを見つけて、
父「あっ!ありがてえな~。俺の好きなしめさば出てきた。これ、今が食べ時みたいやねーか?
たっべよっかな~?でも、なんかだいぶお腹ふくれたしな。おい、迷っとるんやけどどうしたらええと思う?」
母「迷っとるんやったら食べやあ。一緒にお茶飲もか?お菓子は仏壇のお供えでいいね。」
冷蔵庫の中身でいっぱいのテーブルの上に食べ物やお茶をおいて食べ始めました。
もちろん冷蔵庫は開けたままです。
娘「仏壇のお供えってさっき置いたばかりだよね?食べてもいいの?」
私「うちのご先祖さんって見たらすぐ食べるようにしとるて。そうせなすぐ食べられてまうで。だから、大丈夫やよ。」
娘「えっ?お供えってご先祖が食べるためにあるの?サラダオイルお供えしてあるけどすぐ食べれないよね?なんか食べれないものもあるよ。」
私「部屋に置けれんやつは、仏壇の前に置くんやて。それもお供えっていうことにしとるんや。」
食べ終わって、
父「あかん、あかん、あかん、あかん、冷蔵庫のこと忘れとった、早く思い出してよかったわ。
俺らやっぱりついとるわ。なあ?
た~のし~いな~!」
冷蔵庫をいじっていた母が、
母「何回やってもできんのやけど、やってみてくれん?」
父「おおいいぞ。おれはすごいんやぞ。見とってみ!」
父が何回やっても 「ピーピーピーピー」となり続けました。
父「くそ冷蔵庫や。あかんわ、たーけめが!
おばあちゃん、俺が冷蔵庫あけるときは、ちゃんと製氷室のドア閉めとかなあかんぞ。
ふた抑えといて、そっとやぞ。荒くしたらあかんのやぞ。
これがコツや!
そういうこと、そういうこと。
っね!
徳積まな、とーくっ! 」
製氷室のふたを閉めましたが、冷蔵庫のふたを全開にするとまた 「ピーピーピーピー」。何回やっても結果は同じでした。
父「全開にするとあかんゆうこっちゃ、ほんなら、半分にすればええ。冴えとるな、俺。」
半開きにしたら鳴りやみました。
娘「(冷蔵庫開いてたら意味ないんだけど。)」
父「ほれ、鳴りやんだやろ。当たったんや、当たったんや!やっぱり俺は勘いいな~!
やっぱり、冴えとるわ!俺はやりてや!おばあちゃん、このままにしとかなあかんぞ!直したでな。
た~のし~いな~!」
今度は製氷室から「ピーピーピーピー」音がしました。
奥が汚れているかもしれない、と製氷室を取り外す事になりましたが、その直前に音が止みました。
父「そやそやそやそや!これも全部閉めたらあかんのや。半分にせなあかんのやないか?」
私「製氷室開けっ放しで、氷作れると思ってるの?」
二つとも半開きにして、数分たった時でした。
冷蔵庫「ピーピーピーピーピーピーピーピーッ!」
製氷室「ピーピーピーピーピーピーピーピーッ!」
同時になり続けたのです。
父「冷蔵庫も製氷室も、何で鳴くんや!俺がちゃんと直したったに。
何でさっき鳴き止んだのに、何で鳴くんや!あかんやろ鳴いたら。あ~あ”~!もう頭に来た!もう直したらへん。
・・・どうして鳴くんや?何なんや、
か~なし~いなぁ!」
母「物理的な問題やね。」
娘「じゃあ、精神的問題だと思ってたの?」
母「物理的問題やで、なっちゃん呼ぼか?
なっちゃん、ガス屋さんだけあって、ガス直すの上手やったで、たぶん冷蔵庫も直せるはずやで。」
私「どうしてそう思うわけ?」
しばらくして、なっちゃん登場
まずは製氷室の水垢が詰まっているところを、きれいにすることになりました。
なっちゃん「すいません、ストローありますか?」
母「ああ、普通の家ならありますね。」