両親がが上京した時のことです。
2人は新幹線の車両のまん中に座りました。
父は富士山を見るのをいつも楽しみにしています。
その日は晴天だったのでかなり期待していました。
だんだん富士山に近づいてくると、ずっと窓から外を見て離れません。
ついに、その時が来ました。
富士山が見えたのです。
しかも、その日は富士山の頂まで綺麗に見えたのです。
父「富士山が見える、富士山が見える、富士山が見えるぞー!きれいに見えるぞ~!!」
と興奮してでかい声をあげました。
母「そんな、大きい声したら皆ねてみえるで、迷惑やよ。」
と言うと、
父は叫びました。
父「あかん、あかん、あかん、あかん!
寝とったらあかん、寝とったらあかんて、起きなあかん、起きなー!!!
富士山が見えとるで起きなあかんぞ~!!!」
と首を左右に振って寝ている人たちを起こしました。
母はずっとカーテンで顔を隠していたそうです。
夕飯はスパゲティーを食べに行きました。
父はそう入れ歯なのですが、それが合わなので固いものは食べられません。
ウエイトレスが注文をとりに来た時、
母「お爺ちゃんのスパゲティは、Welcomeやなく、くったくたに茹でてください。」
と、さすがに東京の、イタリヤンレストランにきたので、都会人を装い、すました声で言って、作り笑いをしました。
ウエイトレスはシェフに言いに行ったのですがすぐに引き返して、
ウエイトレス「スパゲティの麺は軟らかく茹でれば茹でるほど美味しくなくなりますがよろしいですか?」
母「エエですわ~、
Welcomeやなく、くったくたでお願いします」
とすまして言いました。
食事が終わり店を後にした時に言いました。
父「旨かった、旨かった!あんな美味しいスパゲティ食べたの初めてや!
やらかかったわ、とろけるみたいやった。
さすが東京や!」