2017年4月に、エリンギのミサイル攻撃から身を守るために家族で実家に疎開しました。
親戚のおばあちゃんが、
「裏山のタケノコを掘りにいらっしゃい」、
と言ってくれたので、弟と私と子供たちで行きました。
まずは、お茶しながら、掘り方を教えてもらいました。
ふきんをタケノコに見立てて、
おばあちゃん
「こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
子供たちと小声で、笑っていました。
同じ会話。
全く通じない会話。
全く理解できない会話。
この会話がずっと、ず~っと続きました。
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
まだまだ、続きましたが、はしょります。
おばあちゃん、
「ふきんだから、
わからないの。
腕でやってあげるから。
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側)に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側)から、こっち(右側)に倒すんやね。」
これも、何度も繰り返しました。
息子「僕でも、一発でわかる!」
おばあちゃん
「こっちの腕だから、
わからないの。
反対の腕で教えてあげるわ。」
子供たちに向かって、
私「そういう問題じゃないよね。」
おばあちゃん
「こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側 )に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側 )から、こっち(右側 )に倒すんやね。」
おばあちゃん
「そうじゃなくて、こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(右側)から、こっち(左側 )に倒すの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「わかった、わかった!
こっち(右側)に切れ目を入れて、そしたら、こっち(左側 )から、こっち(右側 )に倒すんやね。」
延々、続きましたが、アホらしいので、はしょります。
娘「まことは一発で分かったけど、
テンパー(弟)は年越しても、わからんよね。」
結局、掘ってみたらわかるという事で、掘りに行きました。
私は2本掘ったらアウトです。
家の中で寝てました。
タケノコ掘りは、体力仕事で、最後の方は疲れてしまったので、息子がタケノコの上に土をかけて、隠しました。
しかし、おばあちゃんは、全部、見つけたのです。
おばあちゃん
「まことさん、まだ、ここにあるから、掘って下さい。」
結局、全部掘って、全員、クタクタになって帰ってきました。
おばあちゃんだけ、やたら元気です。
採りたてタケノコを外の窯で下茹でしました。
家に帰ってから、たけのこご飯を作ったのですが、
採りたてっていうのがいいのか、窯で茹でるって言うのがいいのか、
わからないんですが、美味しかった~。
タケノコが茹で上がるまで、お茶しました。
おばあちゃん曰く、弟ががん で、余命3ヶ月だそうです。
私「まだ、食べれるんやったら、
春ウコン飲めば3か月くらいで治るよ。
抗がん剤はやったらあかんよ。」
おばあちゃん
「5月3日に長野に行くだよ。タケノコ、昨日雨で掘れんかったで。」
弟「そうかね」
おばあちゃん
「5月3日に長野に行くだよ。タケノコ、昨日雨で掘れんかったで。 」
弟「そうなんや」
弟は話に付き合うのがうまいんです。
「何を話しているかわからなくても、「ほう」「へ~?」って言えばええ。
お年寄りは聞いてほしいんや。」
と言っています。
おばあちゃん
「5月3日に長野に行くだよ。タケノコ、昨日雨で掘れんかったで。」
弟「ふ~ん!」
おばあちゃん
「5月3日に長野に行くだよ。タケノコ、昨日雨で掘れんかったで。」
弟「ほ~ん。」
おばあちゃん
「5月3日に長野に行くだよ。タケノコ、昨日雨で掘れんかったで。」
弟「へ~。」
何度も、この会話をして、急に、
おばあちゃん「え?ガン治るの?」
私「うん、治るよ。でも、春ウコン飲まなあかんよ。
飲めるかどうか試したら?」
おばあちゃん「そうかね、3か月かね。」
私「安いよ。Amazonで買えるけど、注文しよか。」
おばあちゃん「買ってきて。遠いんかね?」
おばあちゃん
「長野行くのに5万おろしてきたで、お金がなくなるで、払うで。」
私「体重で飲む量変わるんやけど、体重わかる?」
おばあちゃん「わからない。」
私「どうしようね。」
おばあちゃん
「かっちゃんに聞こか。かっちゃんがいいね。」
「かっちゃん」という名前は、全員聞いたことがない。
どんな関係かも一切わからない。
おばあちゃん
「そうや、そうや、かっちゃんに聞けばいいね。」
おばあちゃん
「そうや、そうや、かっちゃんに聞けばいいね。」
おばあちゃん
「そうや、そうや、かっちゃんに聞けばいいね。」
おばあちゃん
「そうや、そうや、かっちゃんに聞けばいいね。」
おばあちゃん
「そうや、そうや、かっちゃんに聞けばいいね。」
弟「 そうやそうや、かっちゃんに聞けばいいね」
どうやら、このループは終了!
おばあちゃんは、また、ガンの話から、外れました。
おばあちゃん
「かっちゃんに旅行行ったの。一緒に行くのに休みやでホテルがないの。
かっちゃんが泊まって、病院で点滴するの。よくお見舞いに来るの。
かっちゃんはよく旅行に行くの。かっちゃん、旅行好きなの。
いろんなところに旅行いくの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
私たちは理解しようと頑張りました。
また、繰り返します。
おばあちゃん
「かっちゃんに旅行行ったの。一緒に行くのに休みやでホテルがないの。
かっちゃんが泊まって、病院で点滴するの。よくお見舞いに来るの。
かっちゃんはよく旅行に行くの。かっちゃん、旅行好きなの。
いろんなところに旅行いくの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
何度も続きます。
おばあちゃん
「かっちゃんに旅行行ったの。一緒に行くのに休みやでホテルがないの。
かっちゃんが泊まって、病院で点滴するの。よくお見舞いに来るの。
かっちゃんはよく旅行に行くの。かっちゃん、旅行好きなの。
いろんなところに旅行いくの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
弟「そうかね、よかったね~。」
おばあちゃん
「かっちゃんに旅行行ったの。一緒に行くのに休みやでホテルがないの。
かっちゃんが泊まって、病院で点滴するの。よくお見舞いに来るの。
かっちゃんはよく旅行に行くの。かっちゃん、旅行好きなの。
いろんなところに旅行いくの。
ほっほっほ、ホッホッホ!」
まだまだ、同じ話が続きました。
みんな、うなずきながら聞きました。
話したいんだろうな?っと思って。
何回聞いても、意味不明。
もう、はしょります。
私(ガンの話は、どうするじゃ?)
そのうち、話が変わりました。
また関係のない話です。
おばあちゃん
「明日、服買いに行くの」
私「そうかね、街まで行くんかね。」
おばあちゃん
「そう、スクーターで、明日、服買いに行くの」
私「そうかね、行くんかね。」
おばあちゃん
「そう、スクーターで、明日、服買いに行くの」
私「そうなんや。」
これも、何度も続きました。だから、はしょります。
ガンの話に戻そうとして、
私「誰がガン患ってるの?」
おばあちゃん
「かっちゃんは私の下の下の子なの」
私「え?かっちゃんがガンの弟なの?」
おばあちゃん
「かっちゃんに聞いたから、電話してくれる。」
(やっとガンの話に戻ってきたかな?)
おばあちゃん
「あきちゃんなの。お粥飲めるようになったの。」
私「じゃあ、春ウコン飲めるから、大丈夫だよ。あきちゃんって誰?」
おばあちゃん
「子供がいってるから 子供が見てるから。」
私「ほんなら、よかったね」
おばあちゃん
「私、兄弟6人なの。上は、お兄さんだけなの。」
私「この前、お姉さんが亡くなった、んじゃなかった?」
おばあちゃん「お姉さんだよ。」
この話はいったん切り上げました。
意味不明
私が娘をさして、
私「この子の名前わかる?」
おばあちゃん「わかるわけないじゃない、初めて会うから。」
(何度も会ってるんですけど)
私「私は?」
おばあちゃん「ナナちゃん」
私「私は、めぐちゃん。
この子がナナちゃん。」
おばあちゃん「へ~、
同じ名前なんやね!」
私「違うから、私は、めぐちゃん。この子がナナちゃん。」
おばあちゃん「そうかそうか、めぐちゃんとナナちゃん、
名前はあるんやね?」
おばあちゃん「そうかそうか、めぐちゃんとナナちゃんやね。」
おばあちゃん「そうかそうか、めぐちゃんとナナちゃんやね。」
おばあちゃん「そうかそうか、めぐちゃんとナナちゃんやね。」
外に出ていってからも、1人で言っていました。
おばあちゃん「めぐちゃんとナナちゃん」
おばあちゃん「めぐちゃんとナナちゃん」
おばあちゃん「めぐちゃんとナナちゃん」
おばあちゃん「めぐちゃんとナナちゃん」
おばあちゃん「めぐちゃんとナナちゃん」
まだまだ、続きますが、はしょります。
息子は疲れ果てて、縁側で寝ました。
おばあちゃん
「まことさん、そんなとこで寝てて、寒いでしょ。
毛布かけてあげるから。」
息子「毛布、いらない。
縁側の風に当たってるから。気持ちいい。
カーテン開けて、保存しといて。」
おばあちゃんが、娘に
「おじいさん(息子)が廊下(縁側)で寝とるで
毛布持ってって。」
今年も、田舎に帰る予定です。
また、タケノコ掘りに行ってきます。
※おばあちゃんは、心身ともに健康で、認知症ではありません。
昔から、こんな感じです。
命の危険を感じるほど、辛い思いをしてきた人です。
いつも、優しくて温かくて、明るいです。
もう、80歳を越えましたが、元気にパートしてます。
苦しみを通り抜けた人の生きる力なのでしょうか。