父は母なしでは生きていけません。絶えずべっとりとくっついて離れません。母は正直うっとうしく思っています。
母が風邪をひいて寝込んでいると、
耳が聞こえないので大きい声で、
父「ええかね、具合どうやね?寝なあかんぞ。
よう寝なあかんでな。」
母がうとうとすると、父が寝室に入ってきて、話しかけます。
父「どうやね?寝れるかね?何で寝れん?
寝なあかんて、眠れんでも寝なかん。」
また、うとうとし始めると、父が寝室に入ってきて、しゃべります。
父「もう寝れたかね?寝とるか?
おい!寝とるのか?寝れたのか?今寝とる?」
また、うとうとすると、父が寝室に入ってきて、しゃべります。
父「具合どうや?頭冷やしたろか?熱どうやね?
えらないかね?(つらくないかね)
何か飲むか?
何で寝れんのやろ?」
また、うとうとすると、父が寝室に入ってきて、しゃべります。
父「今寝とる?寝てまった?起きとるんか!!
あかんて、風邪の時は寝んと。
どうしたら寝れるんや?
えらいで寝れんのやないか?
点滴うちに行った方がええやろか?」
また、うとうとすると、父が寝室に入ってきて、しゃべります。
父「さっきから何べんも見に来たっとるに、何で寝れんのや。
どうしたらいいんや。足さすったろか?足にあんか入れたろか?あっためた方がええでな。
どうしたら寝れるんやろ?
そうや、今昭和の歌謡特集やっとるで、テレビ見るか?」
母がベッドから起き上がるまで続きます。
母は台所に行き、まな板に向かって、父に聞こえないように、
「うるさい!だまれ!いい加減にしろ!
うるさい!だまれ!いい加減にしろ!」
とつぶやきます。
母が私によく愚痴るのは、毎晩父の足をさすっている間寝るのだそうですが、さするのをやめると起きてしゃべり始めるから、どっちにしろ母は寝れないらしいのです。
朝は寝たふりをしていないと、父がしゃべりだしてうるさいので、ただただ、目を閉じているそうです。
母の誕生日に渡した手紙は信用金庫の封筒に書かれたものでした。ただ一言、
父「捨てないでね」
父は母より9才年上なので、自分が先にあの世に行くと思っています。
父「俺が死んだらすぐ迎えに来たるでな。」
母「私はあんたより上の世界、あんたは私より下の世界に行くんやで、同じ世界には住めんで、迎えに来ても 無駄やよ。」
父「そうやわな~。そうか、そうか。」
捨てられると見た!